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研究領域RESEARCHES

"数理モデル"を通し建築学を見つめる

インターフェイスとしての"建築"

建築の設計において,直観や経験の重要性は改めて言うまでもないでしょう.しかしながら,過度な直観や経験への依存は,建築計画を工学的な合理性から逸脱させる諸刃の剣とも成りかねません.本研究室では,建築の計画・設計を行うに際して,論理的思考という揺るがない判断規準を付加するための数理解析方法を追求しています.デザイン性のような華やかさはありませんが,数学的帰結がもたらす一つ一つの知見は,建築設計を行う際の有力な道具(ツール)となるものと信じています.
 建築計画・設計を追及していけば,その社会的影響を自ずと意識せざるを得ません.人と社会を結ぶインターフェイスとしての建築の在り方を見つめるためには,建築が活用される周辺領域を意識することにも意味があるのではないでしょうか.本研究室では,建築学そのものに加え,「都市」・「人」・「環境」とのインタラクションも考慮しながら研究を進めています.

"都市・建築"を分析する

天空率計算のための厳密アルゴリズム

 近年“天空率”は,都市景観を評価するための定量的指標の一つとして積極的に利用されています.従来の天空率指標に基づく分析は,(例えば円周魚眼レンズを用いた) 現場の写真を基に計量したり,限られた建物形状や視点場に限定して近似的に算出されるのが主でした.
 これに対し,本研究では複数の要素が複雑に配置されている都市景観を取り上げ,コンピュータ計算によって,その天空率を厳密計算するための新たなるアルゴリズムを提案しています.多くの都市景観要素が存在する都市空間の実例として,渋谷の駅前空間を取り上げ,どのような場所において最も多く空を望むことができるのか数値計算も行っています.


大規模建物データを用いた花火大会の視認性評価

夏の風物詩として存在感の大きなものに,花火大会が挙げられます.本研究では,夏の夜空に打ち上がる花火の見え方に主眼を置き,建物による遮蔽と観測位置などを考慮した上で,視対象の花火がどのくらいの大きさで,かつどのくらいの割合で視界にとらえられるかを定量的に評価しています.分析例として,『神宮外苑花火大会』で打ち上がる花火を対象とし,周辺4区(千代田区・港区・新宿区・渋谷区)内の各地点から花火を望んだときの花火の視認量を可視化したものが右図となります.25万戸を超える全ての建物データを同時に考慮している点に特長があり,花火以外にも様々なランドマーク評価への応用可能性が期待できます.


"人"を分析する

周回行動に着目した人々の移動現象の推定

 私たちは日々,通勤通学や買物,観光などを目的として,縦横無尽に移動しています. これらの移動は,都市(社会システム)を成立させ,ひいては持続させるために必要不可欠なものと言えます. このとき,特に重要となる概念が``周回行動''です.例えば,旅行先で,どこか(ホテルなど)を起点とし,様々な観光地を巡る行動は,その典型的な一例です.
 本研究では,この周回行動を明示的に考慮した上で,都市(社会システム)における様々な移動現象を,断片的データから推定・再現することを試みています. 左図は,都道府県を跨ぐ断片的な観光流動データから,各都道府県の``内部''でどのような観光行動が行われているかを推定したものです. このような流動を推定することによって,各観光地同士の結びつきや,その魅力度を向上させるための施策提案などへと応用することが可能となります.




連鎖性を考慮した流動現象に関する基礎理論の構築

社会システムにおける流動を調べる方法のひとつに,アンケート形式による大規模調査があります. 大都市交通センサス,パーソントリップ調査などが有名です(左図を参照). このような調査で得られるデータは,社会整備に必須の,様々な情報を含んでいます. しかし,多数に亘る流動を網羅的に調べるのは簡単なことではなく,調査の終了まで年単位の時間を要することもしばしばです. 社会システムにおける流動を,数学的に``推定''する意義は,この点にあります.
 このような観点からの研究蓄積は一般に``空間相互作用モデル''と呼ばれているのですが,本研究では,当該モデルを``複数の流動がもつ連鎖性''という観点から一般化することを試みています. 上述した周回行動分析はもちろんのこと,階層的物流システムの分析や,情報ネットワークにおけるルーティング制御などの基礎理論として研究を進めています.                     
→関連ページ (早稲田大学高等研究所 Monthly Spotlight)
"環境"を分析する

高速輸送機関の発達がもたらす都市発展への影響分析

  新幹線・航空機といったものに代表されるように,日本には様々な高速輸送機関が存在します. そして,路線延長や新線開通,さらにはリニア新幹線プロジェクトなど,そのネットワークの発達には目を見張るものがあります. このように,都市間の移動がますます便利になることは,もちろん私たちの生活を豊かにする一方,長期的に見たとき一体どのような構造変化を日本にもたらすのでしょうか.
本研究では,高速輸送機関の発達がもたらす``都市発展への影響''に焦点を当て,実データに基づくシミュレーション分析を試みています. 輸送機関の発達は,移動を便利にするという自明なプラス効果があるのと同時に,``ストロー効果''と表現される地方都市の衰退をもたらす危険があることにも,注意しなければなりません. 左図は,コンピュータ上で日本列島の人口分布や鉄道ネットワークの発達を再現し,各都市の発展に対して,どのような影響があるかをシミュレーションしたものです. このような分析を基に,持続的に都市が発展するための方策や,望ましい高速輸送機関の在り方などについて,研究を進めています.


電気自動車の社会的普及に向けた支援インフラ整備

 近年,環境意識の高まりも後押しし,電気自動車に対する注目が高まっています. 今後ガソリン車に取って代わり,新しい都市交通システムとしての普及が期待されていることは明らかでしょう. しかし,その本格的な普及に際しては,バッテリー性能の限界による航続距離の短さや,その再充電に要する時間の長さなど,未だ課題が多いのも現状です.
 したがって,電気自動車が交通システムとして社会的普及を果たすためには,技術発展のみならず,EVを支援するための``インフラ整備''についても議論することが重要となります. 具体的には,現在のガソリンスタンドに相当するよう,電気自動車の車載バッテリーを充電するための``EVステーション''を,都市にくまなく整備しなければいけません. これは,EVステーションの配置状況といった整備方策に,電気自動車の利便性が大きく依存していることを意味しています.
 以上のような観点から,本研究では複数のEVステーションの連携を明示的に考慮し,その戦略的なインフラ整備に関するモデル分析を行っています. 長距離トリップが多く発生するであろう,高速道路ネットワークにおけるEVステーションの適正配置の提案や, バッテリー交換方式と呼ばれるシステム(左図)を導入した場合の,``バッテリー交換型''EVステーションの安全在庫モデルなどについて,研究を進めています.

東京大学 本間研究室

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