天空率と開放性
近年“天空率”は,都市景観を評価するための定量的指標の一つとして積極的に利用されています.従来の天空率指標に基づく分析は,(例えば円周魚眼レンズを用いた) 現場の写真を基に計量したり,限られた建物形状や視点場に限定して近似的に算出されるのが主でした.これに対し,本研究室では複数の要素が複雑に配置されている都市景観を取り上げ,コンピュータ計算によって,その天空率を厳密計算するための新たなるアルゴリズムを提案しています.
これを活用し,道路斜線制限と天空率緩和が消化容積率と建物高さへと与える影響も分析できます.様々な敷地形状ならびに建物形状を考慮することによって,当該制限ならびに緩和規定が消化容積率と建物高さとどのような数理的関係にあり,かつ,積極的に緩和規定を用いるべき状況が明らかとなりました.具体的には,(i)天空率の利用が有利に働くのは,間口の広い敷地で,このときの建物形状は細長くなる;(ii)奥行の深い敷地では,天空率緩和の場合だけではなく,道路斜線制限で多面体を想定した場合でも指定容積率をすべて消化できる,ことが示されています.このように天空率の計算費用に見合った敷地条件が提示されることによって、設計初期段階の作業が大きく効率化されると期待できます.